セルフィーユ
セルフィーユcerfeuil(左端)、英語はチャービルといい、
セリ科のハーブです。
非常に繊細な味わいで、サラダやスープによく使われます。パセリより柔らかく繊細で、フランスでは「美食家のパセリ」と呼ばれます。
オムレツ・フィーヌ・ゼルブ(ハーブ入りオムレツ)やベアルネーズソースには欠かせません。
またセルフィーユを仕上げにちょっと乗せるだけで、ぐんと上品に見え、香りだけでなく、飾りとしてもとても重宝します。
セルフィーユの根 cerfeuil tubereux
セルフィーユの根っこは立派な食材で、セルフィーユの根塊ですが、ハーブを食べるほうのセルフィーユとはまた別の種類。(葉っぱを食べるほうのセルフューユの根っこはもっと小さいそう)
セルフィーユ・チュベローは「回帰してきた野菜legumes retrouves」とか「忘れられていた野菜legumes oublie」と呼ばれる野菜の一つです。かつてはよく食べられていたのに、戦後廃れてしまったものが、割合最近復活を遂げたもの。
つまり、古くて新しい野菜ということでしょう。
皮を剥き、茹でて食べてみると
なんだか既視感のある味。
ふわっと香るのは「栗!」
そしてじゃがいものようなほくほくした食感ですが、後から追いかけてくる味は
「サツマイモ!」
とても甘いのです。なんだか意外で、とてもおいしい食材です。
イタリアンパセリ
イタリアンパセリはフラットパセリpersil pratともいい、パセリよりも香りが強くてメジャーな存在です。
フランスでは通常のパセリも、煮込み時、あるいは刻んでよく使いますが、日本のように飾りとして使うことはほぼ皆無。イタリアンパセリはサラダに、飾りにも活躍します。
そしてレバノン料理の「タブレ」はフランスに根付いた料理ですが、とくに「レバノン風タブレTaboulé libanaise 」にはイタリアンパセリが必須です。
使うのはブルグールというセモリナ小麦の挽き割りですが、じつにたくさんのイタリアンパセリを刻んで混ぜています。
翻訳するなら、これはブルグールのサラダではなくて、
「イタリアンパセリのサラダ、ブルグール入り」
が、レバノン風タブレです。
一番下の写真は、イタリアンパセリのお花。パセリというよりは、アニス系統の香りがして、びっくり。でもともにセリ科なので、あり得ることだと思います。
アネット
アネットaneth の英語はディル、セリ科の爽やかな香草です。
魚、とくにサーモンには相性抜群です。
マリネに、ソースにサラダに使えます。
(私はアネットを入れたハーブサラダが大好きです。全ハーブの中で一番好きな存在かもしれません)
アネットの花と種
お花も飾りに、ハーブサラダに使えます。これは生徒さん宅ガーデンから!
シブレットとその花
シブレットciboulette は西洋アサツキの日本名から分かるように、ネギの一種ですが、細くて軽い繊細な香りを持ちます。
フィーヌゼルブには欠かせませんし、
フォロマージュブランのディップやセルヴェル・ド・カニュにも必須のハーブです。
ネギらしく、紫色の小さな花が咲きます。
ウイキョウの花
ウイキョウfenouilは野菜ですが、お花は香り高くハーブと言ってもよいかと思います。
左のウイキョウの花は農家民宿おかださんのもの。噛んでみると、とても甘かったです。それはガムレベルの甘さ!
右の写真が種。フランスでは花の固まりをこんなふうに乾燥にして、ピクルス作りによく使います。
日本では自分で栽培している方しか手に入らないのが普通ですが、先日(22年春)はじめて市場にパック入りの「ウイキョウの花」を発見しました。1花300円!
エストラゴン
セリ科のハーブで、独特の強い香りがあります。
こうやってヴィネガーにつけ込んだ
エストラゴンヴィネガーもあり、
ベアルネーズソースには必須。
ウサギ料理にもよく合わせます。
セージ
セージも独特の香りのあるハーブですね。フランス後はサージュsage
シソ科。肉のくさみ消しに有効で、うさぎ、豚、ソーセージ類にはよく使われます。
大好き!とは言えないのですが、ときどきひどく素晴らしいと感じることがあります。
ちなみにソーセージsausageは、セージsageを使うからそう呼ばれるようになった、という話しはじつは嘘だそうです。
ローズマリー
ローズマリーは、フランス後はロマランromarin
シソ科のハーブで、地中海沿岸原産。ハーブなのに、すぐに木に育ってしまいます。
仔羊や豚肉によく合わせますね。
育てている方にお花を貰いました。
これを摘んでお肉の皿の飾りと香りに使いたいのですが、
そうそううまくタイミングが合わず、いつか叶えたい夢。
うっすら紫の花は、本体の香りの強さに似合わず、可憐です。
ハーブサラダ
生徒さんがご自宅の庭から摘んで来てくださったもの。
だから今日の日曜日の主役はオムレツではなくて、ハーブのサラダsalade d’herbesです。
イタリアンパセリ、バジル、ういきょう、ういきょうの花。そして講座の残りのセルフィーユを取り合わせて。
初めてハーブだけのサラダを食べたのは、「La Timonerie」というパリのレストラン。
15年も前、当時新進気鋭の若手シェフPhilippe de Givenchyのお店にでかけたときのことです。
サーディンのサラダの上にどっさりのハーブ。イタリアンパセリ、エストラゴン、ロケット、ミントの葉にバルサミコがからめてありました。
今もはっきり店名まで思い出せるほどの衝撃です。
ぱーん!と鮮烈な香りが広がりました。
「La Timonerie」
35 quai de la Tournelle
5e Paris
そんなことを思いだしながらの朝食です。
今回はウイキョウの芳香がぱーんと広がります。
通常のウイキョウの葉には香りはあまりないと思いますが、これは葉から強くウイキョウの味がします。
どうして? と思ったら、これは料理に使う、茎の下部がぷっくり膨らむウイキョウ(フローレンス・フェンネルFenouil de Florence)ではなくて、すっと高く伸びるほうのタイプ(スイート・フェンネル)なのだそう。
スイートフェンネルの葉には強い芳香があり、根も使えるようです。その種子がフェンネルシード。ちなみにフランスでは花の固まりをこのまま乾燥にして、ピクルス作りによく使います。
目の覚める衝撃のサラダですが、これを買って作ろうと思うと結構な値段がしてしまいます。
庭で育てられるのはうらやましいなあ・・。
けっこうパンチのあるサラダなので、ひとまず肉料理の付け合わせにどうぞ。
フィーヌ・ゼルブとは
フィーヌ・ゼルブfines herbesとは、直訳で「繊細な香草」
これはパセリやセルフィーユ、エストラゴン、シブレットなど、上品な香草を取り混ぜたハーブの組み合わせのチームです。
ドレッシングやソース、オムレツにその題名が登場します。
オムレツ・オ・フィーヌ・ゼルブを食べるとき、いつも昔むかしパリのラデュレで食べたブランチのことが思い出されます。オペラのお店の、奥まった窓際のテーブルでのこと。
「これがパリのオムレツなのだ・・」
ハーブを混ぜただけでも、こんなにおいしく、かつお洒落なフランス料理になるなんて! フィーヌ・ゼルブって、大仰だけれど、なんて素敵な響き! それは素朴な感動でした。
いつだったかパリに行ったとき、シャンゼリゼのお店で再びオムレツを注文してみました。
「がし!」
ちっとも卵は柔らかくなく、「なんだかなあ・・」の味わい。追憶とは、つねに美しいものです。
超高い朝ご飯でした。
ソース・レムラードにも使います。マヨネーズにフィーヌ・ゼルブを混ぜ、千切りにした根セロリに。
レムラード・ド・セロリの完成です!