ガトー・バスク gâteau basque

ガトー・バスクとガトー・バスク

ガトー・バスクは「バスク地方のお菓子」という意味。

最近はパリでもフランス各地の地方菓子がお菓子屋さんで売られるようになりましたが、ガトーバスクに限って言えば昔から非常にポピュラーな地方菓子で、パリでもスーパーやデパートで買うことができました。

バターケーキとサブレの間くらいの生地に、カスタードクリームを詰めて焼かれたタイプで、シンプルながら、生地とクリームの組み合わせはとってもおいしくて、大好きなお菓子の一つです。

ところが、ずっと前、ポーPau(バスク地方のすぐ隣)を旅行したときに見たガトー・バスクは、もっとサブレっぽい生地にブラックチェリーのジャムをはさんであるものでした。
あんまりにもびっくりして(というのはパリの料理学校で習ったのは、前述のケーキっぽい感じのガトーバスクだったので)、たまたまベンチの隣に座っていたおじさんにぽろっと言ってしまいました。
「これ、ほんとにガトーバスクですか?」
ガトーバスクって、もっとこれこれこうで、と説明してみました。
バスク人らしいおじさんは

「あんなのはガトーバスクじゃないよ」
と、ひとさし指を左右にふりながら、ちっちっちと舌をならしながら言うのです。

おじさんは黒いベレー帽をかぶり、みごとな赤い鼻(アルコール焼け?)で、まさしく正統派バスク人といった感じ。(ちなみにベレー帽の発祥はバスク地方です)

ガトーバスクの正統は、イッツァス村のブラックチェリーのジャムをはさんで焼き上げたもの、とされます。しかし今ではこの村のブラックチェリーはそうそう手に入るものでもないほどの貴重品となってしまい、パリのデパートでもジャムを見かけたことはありません。

しかし次にバスクを訪れたときには、町によってはバターケーキ生地に近いものからサブレっぽい生地までかなり幅があり、中身もカスタードクリームのものとチェリーのジャムのものと両方ありました。
「なんだ、作り手の好きでいいのか!」

ガトーバスク祭

ところで発祥の地といわれるカンボ・レ・バンCambo-les-Bainsの町では、10月の最初の日曜日とその前日の土曜日に、ガトーバスク祭があるようです。

ガトーバスク祭の公式HP
https://www.lafetedugateaubasque.com

2021年で18回目なので、それほど古くからの歴史があるわけではありませんが、バスク祭の動画や、コンクールやワークショップ、レシピ、歴史が載っていて、結構楽しめます。

ちょっと中を覗いてみましょう。

ガトーバスクはフランス中に広まっているけれど、オリジンはカンボ・レ・バン。

最初は小さいサブレで、2世紀ほど前のこと(たぶん19世紀の前半あたりの話し)

「Biskotx(ビスキュイのこと)姉妹」と呼ばれていたElisabethとAnne Dibarの姉妹がガトーバスクの守護者として、「ビスキュイ・メゾン」を焼いていたことが記録されている。

ガトーバスクは丸くて、金色。中身は2通り、クレーム・パティシエ−ルと黒チェリージャム

中身が大切。生地も大切。

良い材料で温かい感じに焼かれ、上も下も良い色。バターと粉がよく混ざり、よく焼かれていること。
厚みがある。

自然な材料のみを使うこと。苦アーモンド、プードル・ア・クレーム(=カスタードを簡単に作る粉)、粉末卵の使用禁止

ガトーバスクを守り、もり立て、広め、バスク経済を発展させるための団体「エグズキアEguzkia(バスク語で太陽)」に所属し、認証を持っているお店は19店。だいたいバスクにあるけれど、よいガトーバスクを広めるためのものなので他地方、外国も可。

10月の第1日曜とその前の土曜のガトーバスク祭は
町のそぞろ歩き(シードル付きの試食)、販売、ワークショップ(作り方教室)、伝統ショー、民芸品市、音楽、コンクール、騎士団の練り歩き、教会でのコンサートなどで構成。

コンクールはアマチュア部門と若手職人(20才まで)の2部門。プロは賞金あり。

コンクールでの審査ポイントは4つ
見た目、香り、味、テクスチャ(組成)

審判が感じているのは、
色、香り、カリカリか柔らかいのか。口に入れたときバターの香りがあるのかないのか。香り、材料などなど。

Eguzkiaの会長は
「ちょっと乾いて固い感じrassiがよい。24時間置くことで香りが立ってきて、熟成し、よくなる」と言っています。

(余談ながら、私の作るチェリー入りのガトーバスクは4-5日たってからのほうが香りがよくなって、不思議!と思っていましたが、これを読んで、そういうものなのかと納得しました)

というわけで、最近の私のガトー・バスクの授業では
・カスタード入りのちょっとバターケーキ的タイプ
・ブラックチェリージャム入りのサブレタイプ
の2通りをご紹介しています。

バスクでは家庭でお菓子を作る習慣があり、各家庭に、パティスリーにも当然のことながら自慢のレシピがあるようなのです。

発祥の地の人たちが両方とも正統と言っているのですから、両方必要ですね!!

ブラックチェリージャムが正統と言われてきた理由は?

ではどうしてブラックチェリージャム入りが正統と言われ続けてきたのでしょうか。

パリ在住のフードジャーナリスト松浦恵理子さんの取材記事(「B&C」2011年1-2月号)によると、

エグズキア会長のフランソワ・ドゥヴァンさんは、『ガトーバスクはもともと家庭で作られ、母から娘へとその製法が受け継がれたので、文章による記録があまりありません。文献として残っている最も古いものに、黒さくらんぼを入れたものが登場するため、これが起源だという説が広まったのでしょう』と語っていた

とあります。

というわけで、やっぱりガトー・バスクはどっちも正解が結論のようです。

ちなみについでながら、ご紹介しました幻のイッツアス村の黒さくらんぼ!!
毎年6月の第一日曜日にさくらんぼ祭があるようです。

http://www.itxassou-paysbasque.com/cote_detente/fete-cerises.php

販売とか、ジャムのコンクールがあるみたい。

私はどちらかというと、こっちに行ってみたいです。
なぜならガトーバスクは1年中買えるけど、生のさくらんぼはこの日しかきっと買えないだろうから!

そうそう。ガトーバスク祭のHPには「本当のガトーバスクの公式レシピ」が載っているので、今度作ってみたいと思っています。

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