エポワスはフランス・ブルゴーニュ地方の牛乳のウォッシュタイプのチーズで、AOP(原産地保護名称)を持っています。
すごく強いにおいがしますが、しびれるようなおいしさ。私が一番好きなチーズです。
表皮は光輝くオレンジ色。塩とマール(ぶどうの絞りカスのお酒)で洗って、熟成させてあり、独特の香りと旨味がぎゅっと詰まっています。熟してくるととろりとして、流れ出すくらいです。
エポワスは15世紀にこの村に住み着いたシトー会派の修道士によって作られ、その技術は雇われていた農婦、その娘達へと受け継がれ、19世紀には美食家ブリア・サヴァランによって「チーズの王様」と呼ばれるようになったと、本間るみ子さん著「チーズの事典(ナツメ社)」にあります。
ずっと前、教室から研修旅行に行ったときに、エポワスの工場見学に行きました。
それがエポワス村にあるベルトー社 Berthaut
ここは第二次世界大戦後に廃れかけたエポワス作りを再興したロベール・ベルトーさんの始めた会社です(日本にもたくさん輸入されています)。
中は近代的な大きな工場で、上から下まですっぼり雨合羽のような透明ビニールを着て、靴にもビニールを履き、中を見せてもらいました。全行程説明付き。
酵素レンネットを入れる部屋、型に入れる工程、熟成のところ、塩で洗う装置などなど、部屋ごとににおいがあきらかに違い、とても興味深い体験でした。
所要2時間くらいだったように記憶しています。
そして見学料はタダ。私たちはチーズ業者でもないし、先方には何も得はなかったのにと思うと、申し訳ないくらいです。
そこでせめとものお礼にと、敷地内にあるブティックでみんなでいっぱいチーズの買い物をしました。
帰りには、すぐのところにある、エポワス城も見学に。こじんまりした平城でした。
一番好きなチーズだからこそ、エポワスに工場見学に行ったのですが、いろいろ見せてもらって、なおさら好きになりました。
だからエポワスは私にはとても思い入れの強いチーズですし、レストランでチーズを注文するときにはほぼ必ずエポワスを入れます。
そういえば、20代のころ、レストランで食事の最後に注文すると、
「一番強いけど、大丈夫ですか?」
なんて、サービスの方から聞かれたものでした。その頻度は、ほぼ必ずと言っていいくらい。
でも最近、そんなふうに聞かれたことはありません・・。
私もすっかりエポワスが似合う大人と見なされているということなのでしょう。
さて、いつだったか京都のランベリー(閉店)では熟した柿にエポワスのソースが掛けられてでてきました。それはそれはおいしくて、印象的でした。
スプーンで掬うほど熟したエポワスよりは、その手前の、中心が柔らかいくらいのエポワスのほうが好みではあるのですが、ソースはまた格別。そこで私も、熟したエポワスを半量の牛乳で溶いて、かぼちゃのスープに垂らして頂きました。あの風味がお好きな方にはオススメです。