ポトフのポpotとは、「壷」とか「鍋」というような意味です。フfeuとは火。つまり火にかけた鍋というような意味です。
他にもポテpoteeやポタージュpotageがpotから派生した言葉です。お鍋を火にかけて、ことこと煮て作る料理を思い浮かべることができます。
さてポトフは鍋に水と野菜と肉を入れてぐつぐつ煮たらできる簡単な料理、というイメージですが、じつはこの3つを同時においしく仕上げるのは、簡単なことではありません。
フランスでも、おいしく作るために、料理人も料理上手も喧々諤々うんちくを傾ける料理だと言われているくらいなのです。
下手くそに作ると、肉は味が抜けてスカスカ、野菜はぐずぐす、ブイヨンは薄くて寝ぼけ味・・・ということになりかねません。
肉を入れるのは水からなのか、湯が沸騰してからなのか。塩を入れるタイミングと量。水の量の設定、どの水を使うのか、などなどいろんなポイントがあるのです。
まずは水の量から。水が多いと肉の旨味も野菜の旨味もだらだらと溶けだし、肉の味も野菜も味も抜け、かつ旨味の溶け出た水(いずれブイヨンになる液体)も結局のところ寝ぼけ気味ということになってしまいます。
そこで私がだいたい決めているのは、「お肉の重さ」=「ブイヨンの量」ということ。用意できた水の量が1kgなら、出来上がるブイヨンの量は1kgということです。
ただ加える水の量はもう少し多めになります。長く煮ている間に蒸発するので、その分を見越して少し多めに加えます。あるいはひたひたの水で煮て、減ったら少しだけ足すというやり方でもOKです。
これは鶏のフォン(だし)や仔牛のフォンのときも、野菜のブイヨンを取るときも同じです。
茹で肉を作るならば、なるべく少ない水分量で茹でたほうが、溶け出す旨味が少なくてすむ(=お肉がおいしい)のですが、ポトフの場合は同時にブイヨンもおいしく、かつある程度の量も必要です。でも多すぎは禁物。
水からゆでるのか、沸いた処に加えるのか。
水からゆっくり火を入れると、ゆっくりと旨味が溶けでます。ブイヨンは少し濁ることに。
沸いているところに肉を入れれば、茹で汁はクリアに。かつ旨味の流出は少ないめになります。
これはその日、肉が多めにあるのか、そうでもないのか、で決めます。多めなら肉からそれほど旨味が流出しなくても、ブイヨンは充分においしくなる計算ですから、お湯から投入する、というふうに。
ではつぎにブイヨンに塩を加えるタイミングについて。
塩をすれば、液体に流出する旨味は少なくできる(すでに水にミネラル分が溶けているので)のですが、ある程度はブイヨンに旨味が溶け出てくれないと困ります。ポトフとは、ブイヨンもお肉も野菜も、みんながおいしくないといけない料理ですから。
かといって、煮込みの最後に塩を加えたら、やっぱりお肉からは旨味がだらだらと溶け出てしまうことに。
そこで私は途中である程度の量の塩を加えてお肉からのうまみの流出をある程度で止め、あとは水が減ることを考えながら少しずつ塩を足して、ラストに味を完成させることにしています。
使う水の種類によっても少し味が違ってきます。
水道の水は日本では普通は軟水ですが、フランスでは硬水。
でも最近は日本でも硬度の高いミネラル水も売られています。硬度はマグネシウムとカルシウムの量のことです。
硬度の高い水にはすでにミネラルがたくさん溶けているので、硬水で煮込んだほうが、お肉の旨味はでにくいということになります。となると、ブイヨンはあまりおいしくならないのか??と思いますが、だらだらっと旨味がでてこずに、クリアな味わいに煮上げることができます。水に溶け込んだカルシウムには蛋白質を固める作用があるので、くさみ物質と結びついてアクとなって浮いてくるのです。
これは同時に同じレシピで同じように、軟水と硬水(エヴィアンかヴィッテル。硬度300程度)で作ってみると、微かながら、でもはっきりとした味の違いがでてきて、面白いものです。もしあればぜひ試してみてください。
ちなみにコントレックスの硬度は1468mg/1L
ここまで硬度が高いと、逆に肉が固くなってしまうのだとか(試したことはありませんが)。もしコントレックスを使うなら、水道水で薄めて硬度300くらいに調整します。具体的にはコントレックス180mlに水道水820mlでだいたい硬度300の水1Lができます。
硬水を使ってクリアに仕上げるなら、水が湧いてからお肉を入れることをおすすめします。水からゆっくり沸かすとブイヨンはにごってきますが、沸いているところにお肉を入れればすぐに表面が固まるので、ブイヨンはにごりません。つまりすっきりした味になるということです。