アスパラガスをおいしく茹でるのに大切なことは、まず水の量と塩の量です。つまり必要最低限の水を鍋に入れて沸かし、きっちりと塩を入れます。
水が多いと、旨味はだらだらと流れ出します。また塩がすでにきちんと入っていれば、すでに水にミネラル分が溶けているため、旨味が抜けにくくなります。
裾1/3ほどは皮が固いので、剥いておきます。白アスパラガスのときは、(産地ですぐに茹でるのでない限り)上から下まで全部皮を剥いてしまいます。
この皮、捨ててはいけません。
茹で汁に一緒に入れて茹でると、アスパラガスの香りが抜けにくくなります。どうせ捨てるものですから、最後まで働いてもらいましょう!
さらに、ちょっとマニアックですが、硬水を用意するとなおおいしく茹でられます。具体的にはエヴィアンやヴィッテル。
あるいはコントレックスを水道水で割っても。
塩を入れておけばすでに水にミネラル分が溶けているため旨味が抜けにくいのと同じで、ミネラル分の高い硬水は旨味を流れ出にくくさせる効果があるのです。
アスパラガスのオランデーズソース
ヨーロッパに春を告げる食材「アスパラガス」は、
彼の地の方々にはご馳走です。
生徒さんのお父様がドイツに出張に行かれたとき、取引先の人から
「うちにご飯を食べに来ないか」とご招待を受け、行ってみたら
「アスパラガスで驚いた!」
という話しを聞きました。
たしかにおいしいけど、そこまで?
と最初は感じたものですが、
私たち日本人が松茸や筍に顔をほころばせ、季節の恵みを愛でるのと同じ感覚なのかしら
と思うと、とても納得しました。
さてアスパラガスでまず作るのは
アスパラガスのオランデーズソース Asperges sauce Hollandaise
です。
オランデーズソースの作り方
オランデーズソースとは、「オランダ風のソース」という意味です。
もともとはノルマンディの有名なバター産地イズィニー Isignyの名前が冠された
ソース・イズィニーだったが、戦争でノルマンディが占領されたためイズィニー産バターが使えず
オランダからの輸入で凌いだことに始まり、戦後バターが復活しても名前だけそのまま残った、と聞きました。
イズィニー産バターははっきりとした酸味とクリアな口溶けで、私の大好きなバターです。
日本でも買えますが、なかなか高いのが困りもの。
さて、作り方
2 jaunes d’oeufs 卵黄 2個分
25g vin blanc 白ワイン(水でも可) 25g
120g beurre 発酵バター 120g
jus de citron レモン汁 12g +α
cayenne, sel カイエンヌペッパー、塩
- バターを湯煎にかけて溶かし、澄ましバターを作る。
- 卵黄を溶き、白ワインを加えかき立てる。湯煎にかけ、8の字を書くように、もったりするまで泡立てる。
- 混ぜながら、大さじ1杯程度のバター(上澄みのみ)を徐々に加えていく。
- バターが全部混ざったら、レモン汁、カイエンヌペッパー、塩で味を整える。
- ソースは、サービスするまで湯煎(熱すぎない温度=指を入れていることができる程度)にかけておく。
- アスパラガスは、きっちりと塩をした湯で茹でる。*さっと茹でるのではなく、きっちりと。
ソース・オランドネーズはよく「温製のマヨネーズみたいな感じですよ」と
表現しますが、じつのところはもう少しふんわりした感じです。
熱すぎる湯煎だと一気に卵黄が固まり、ぼってりに。
ぬるすぎるといっこうのふんわりせず、ギリギリの温度滞で手早く勝負します。
難しすぎるということはないのですが、ぼんやりしているとうまくいきません。
なかなか口では言い表しにくいので、教室へどうぞ!
夢のオランデーズ!
コロナになる前、生徒さんをお連れして、パリで料理教室をしました。
現地の旬が確実には分からないので、レシピは決めずに、着いてからあれこれ見て、メニューを決めます。
そのとき3月の末。ちょうど白アスパラガスがたくさん出てきていて、
「そうだ、白アスパラガスとボルディエのバターでオランデーズで、
とびきりの贅沢をしてみよう!」
と思い立ったのです。
それはそれはクリーミーで、香り豊かでおいしくて、うっとり。
ある生徒さんからは
「人生で食べたオランデーズの中で、一番おいしかった!」
とうれしい言葉を貰いました。