仔羊

仔羊は高級素材

仔羊は1歳までの羊で、フランスでは高級料理の素材の一つに数えられます。

背肉はレストランにほぼ必ず登場しますし、腿肉まるごとgigot d’agneauは家庭の日曜日のご馳走です。

ところが、昔むかし、フランス料理の肉料理の中で、私が唯一苦手だったのが仔羊agneauでした。 ちょっと独特の、何というかアラブの香りがあり、私にはおいしいとは思えないどころか、ちょっとした苦痛でした。

しかし料理学校の卒業試験のとき、あろうことか課題は
「仔羊」。

どーんと、谷底に突き落とされた気分で、もう泣きそう。
決まった料理を作るわけでなく、自分で料理を組み立てて、発表しなければならないのです。

仕方がないので、それからいくどもいくども仔羊の背肉をブロックで買い、いろいろな調理法で試作を重ねました。
味見はほとんど息を止めて、ワインで飲み込む感じ。

しかし。不思議なことに、試験が終わるころには、食べられるようになったばかりでなく、おいしいとさえ思うようになったのです!

代表的な料理

まずは香草焼き。

骨付き背肉の塊(carre d’agneau)をまずオーヴンで焼き、取りだしてマスタードを塗り、

パセリとにんにくのみじん切りの衣(=ペルシヤードpersillade)を付けてふたたびオーヴンで焼きます。

中のロゼ色に焼けた仔羊と、外の緑色のコントラストが舌にも目にも美しい料理です。

腿肉は仔羊のものでも1本2〜3kg。これをまるごとローストにした
「ジゴの7時間焼き gigot d’agneau à la 7 heures」
という定番料理に憧れて、挑戦してみたことがあります。

料理教室内にはおさまらない時間なので、早朝にスタート。

興味ある生徒さんがお一人だけいらして、二人で楽しく仕込みました。 最初に表面に焼き目を付けようとして、フライパンに入らず、困ったなぁ。

ちなみに腿肉の先のほうは「スーリsourris」といって、意味はねずみです。
形が似ているからの命名ですが、長時間焼いたり、コンフィにすると、ほろほろと独特の食感になり、とてもおいしい部位です。

フランスではマルシェに行けば、スーリだけで売られています。チャンスがあったらレストランでぜひ!

有名産地と銘柄

仔羊の肉質はしっとり柔らかく、他のどの肉にもない風味があります。

銘柄のついた
たとえば「ポイヤックPauillac」とか「プレ・サレagneau de pré-salé」
には、さらに上のランクのおいしさがあります。

ポイヤックはワインでも有名なボルドーの地名で、シャトーマルゴー、ラフィット、ラトゥール、ムートンなど、きら星のようなワインを生み出す地区です。ポイヤックの仔羊には、もちろんポイヤックの赤を合わせるのが美食の定石。

プレサレは、「すでにpré、塩をしたsalé」という意味です。

モンサンミッシェル近くの草地は海風が吹きつけ、草はたくさんのヨードを含み、これを食べている羊の肉は、すでに塩がされた状態というわけです。

現地にいけばレストランで食べられますが、パリでも上等のお肉屋さんにときどき見かけます。

さらに上のランクの食材としては
「乳飲み仔羊agneau de lait」も忘れてはいけない存在です。

母乳だけで育った仔羊で、生後30〜40日。火を入れても、うっすらピンクです。
(草を食べ始めると身は赤くなり始めます。つまり赤いほど、育っている仔羊ということに)

業者さんのおかげで、日本にもIGP(地理的保護名称)認証のついたピレネー産の乳飲み仔羊が入ってきています。しかも半身ですから(ちょっと怖い)、料理のしがいがあるというものです!!

一年中食べられますが、仔羊の旬は春。
キリスト様が復活されたことを祝う復活祭の代表的なご馳走です。

キリスト様のお使いである羊を、復活祭に食べるのってどうなの!?
と思わなくはないですが、これはまた別の機会に。

そういえば、口蹄疫が理由で、2001年あたりから16年間も日本にはフランス産が入りませんでした。この間は、オーストラリアやニュージーランド産を使ってきましたが、やっぱり味の濃さ、風味が違うのです。草が違うのか、つまりは土なのか。2017年にフランス産が戻ってきたときは、本当に感動的で、ありがたくいただきました。

今や私はレストランに行くと、仔羊か、仔牛か、鳩か?の三択で迷うくらいに仔羊が大好きな食材になりました。でもときとして、たとえばこちらの体調不良か、食材側の具合が悪いのか、

「ちょっと、無理。食べられない・・」
という日がまれにでてきます。こういう日は、とてもいやな臭いに感じられ・・。

仔羊は苦手とおっしゃる方が多い食材であることも事実なので、食べられなかった過去の自分を忘れずにいようと思っています。
ちなみに独特のにおいは、温度が下がってくると感じやすくなるので、温かいうちに。

また独特の香りは脂のなかにたくさん含まれるので、苦手めな方のためには徹底的に脂を掃除すると、かなり軽減されます。
(好きな人にはつまらないのですが・・)

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