タダモノでない胡椒
パリのお土産に、そのタダモノでない胡椒を頂いたのは18年の3月のこと。
ラファイエットの食品館で買われたお土産でした。
La route des Indes
https://www.laroutedesindes.ca/fr/
そもそもはオテル・ムーリスの朝食に出てきて、あまりによい香りだったので、場所を教わって買いに行かれたものなのだそう。
左の小さめ胡椒粒も上品で、繊細なよい香りがしましたが、秀逸だったのは、右の山椒みたいなほう!
香りを嗅いでみると、山椒の系統の香りにまるでレモンのような、はっきりした柑橘の香りがあります。
「うわー良い香り!!」
ところが名前が分からなかったのです。
「でも山椒じゃないです。この隣にsanchoが売られていたから」と、下さった方。
今や日本の山椒は、poivre japonais(日本の胡椒)ではなくて、すでにsanchoのままで通じるようです。
さらには、花椒とも少し色が違います。
柑橘の香りがあるなら、これはもうデザート用に決定!
というわけで、その日のデザートの黒ビールアイスにガリガリと挽いて食べました。
「おいしいー!」
黒ビールアイスはおいしいのですが、山椒があるがゆえにもっとおいしくなりました。だんだんとこの山椒を味わいたいがためにアイスを食べているような感じに!
その日、テーブルを胡椒挽きがぐるぐると回りました。主菜もデザートも。手から手へと胡椒挽きが回され、ガリガリ、ガリガリ・・。
なんてよい香りなのでしょう!
スパイス部門で、教室史上これまでで一番の盛り上がりだったと言っても過言ではありません。
名前が分からないので、勝手ながら「レモン山椒」と命名。今度パリに行って確かめないと!
グレープフルーツの香りがする胡椒
しばらくしてそれが、
poivre de Timut
というネパール産のスパイスではないか、と判明しました。ネットを調べてみると、
「レモン、同時にグレープフルーツの香りがする胡椒。ネパール・カトマンズ産」
などとあります。
「驚愕のスパイス。外観は花椒に似ているが、香りはまったく別物。柑橘類、とくにグレープフルーツのルビーの香りに驚かされる」なんていうフランスのサイトも!
(ルビーと限定する、このマニアック加減、好きです。)
ちなみに中華料理に詳しい方によると、中国でも山蒼子という名前で似たものがあるとのことでした。
胡椒poivreと書かれていましたが、形状からしてやはり山椒の一種だと思います。
ティミュットの使い方
とにかくよい香りで、それからというもの、繰り返し繰り返し
料理にお菓子にと使ってきました。
チョコレートのトッピングに。ガナッシュでボンボンに。フォワ・グラ&いちごのカナッペ。
オマールのオレンジのソースに。
サーモンマリネに。クッキー・サレに。鴨のペッパーローストにも。
ショコラ・ショーに、ティミュットの香りを抽出してアイスクリームに。
洋梨の赤ワイン煮のスパイスに。海老のブイヨンに。フォワ・グラのテリーヌに、桃のスープに。
とにかく魔法の粉のように、料理やお菓子を高め、合わないものがないくらいに
幅広く活躍してくれます。
好きすぎて、料理教室をしていても、何かというと誰かから、
「アレ、使いますか?」
と聞こえてきます。
「カンボジア産世界一の黒胡椒」も使ってみたこともありますが、ここまでのインパクトはなかったのでした。
最初にいただいてから早4年、入れ替わり立ち替わり、誰かがパリに行く度にお土産で。
私も大袋で買って来るし。
わりと最近、日本のスパイス屋さんでも少し見かけるようになったと情報を得て、また買って来てくれる人もあり。
結局のところ、コロナ禍でパリにいけない日が続いているというのに、まったく絶やさずに今日まで来れています。
私たちはすっかり中毒です。
チャンスがあったら、みなさまもぜひ試してみてほしいものです。