プロフィール・著書– 塚本 有紀 –

ご挨拶

フランス料理を食べるのが、作るのが好きな方。フランス菓子のおいしさと美しさに魅せられている方。経験はないけれど作ってみたいと感じていらっしゃる方々。私とご一緒しませんか?

私は食べることも、作ることも大好きです。
多くの方々と「食」の喜びを分かち合い、心豊かな時間を過ごせたらと願い、料理とお菓子の教室「Atelier [igrek](アトリエ・イグレック)」を開いています。そして出版というもう一つの方法でも、フランスの豊かな食文化をお伝えしていけたら、と願っています。

ともに、作ることを楽しみ、食べることを楽しんでいきませんか。あなたのご参加を心よりお待ち申し上げています。

塚本 有紀
京都外国語大学 英米語学科卒業
1995年渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリ本校料理コース、製菓コース修了、グラン・ディプローム取得。トレトゥール(ケータリング)コース修了。同校アシスタントを務める。
1998年7月「パリ食いしんぼう留学記」(晶文社)出版
2000年5月フランス料理・製菓教室「アトリエ・イグレック」を開講し、現在までフランスの地方を含むトータルな食文化を紹介している。

・小麦アレルギー対応の米粉によるお菓子作りのレシピ開発と教室
・パンの業界紙に取材記事やフランスの焼菓子エッセイを連載
・パン・ド・ロデブ普及委員会 立ち上げメンバー 事務局長・副代表理事(2012年〜2022)
・(一財)藤井幸男記念・教育振興会 代表理事
・フィリップ・ビゴ氏来日50周年を祝う会 事務局
・西原金蔵氏卒業記念パーティ「魂の伝承」事務局 ほか

Motto

*定期講座は少々時間がかかりますが、なるべく丁寧にお伝えしたいためです(お急ぎのときは、先にお知らせください)。

*無農薬や国産の小麦粉、オーガニックシュガー、抗生物質や遺伝子組み換え飼料不使用の卵、低温殺菌乳など、できる範囲でなるべく安全な素材を使います。

*家庭でのお菓子作りにベーキングパウダーや色粉が必要とは考えていませんので、原則的に使いません。(後述のメッセージに詳しく書いています)

*料理や菓子を楽しむだけでなく「きちんと勉強してみたい」という方に来ていただきたいと考えています。
流行のみを追うのではなく、正しい方法やあるべき姿をまずは知っていただきたいのです。あとはみなさんのセンスで、アレンジしたり、自分の好みに作りかえたり。そのお手伝いはいつでもできます。

私が大切に思うのは、家族や大好きな人たちと「おいしいね!」と食べられること。手作りですから余計な添加物を口に入れる心配はありませんが、せっかくですからもう一歩踏み込んで、なるべく安全な材料を使っていくことも心掛けたいものです。

ともに、作ることを楽しみ、食べることを楽しんでいきませんか。あなたのご参加を心よりお待ち申し上げています。

Message

思い返せば、中学卒業の前。作文「将来の夢」には、「英語を使って国際的な仕事がしたい」と大仰なことを書きました。
実のところは当時はさしたる考えもなく、作文も大嫌い。「将来何になったらいいのかな?」の問いかけに、母が口にした「例えば」をそのまま拝借したものでした。

アメリカでのキャンパスライフを夢見るようになったのは、高校生の頃に見た映画「ベスト・キッド(ラルフ・マッチオ主演)」がきっかけでしょうか。外国語大学を出て、念願の外資系の会社に勤務、楽しい会社員時代でした。

一方で、子供の頃よりの趣味だったお菓子作りが、東京の一人暮らしの部屋では叶いません。フラストレーションがたまり、仕事をしながら代官山「パリ コルドン・ブルー料理製菓学校」に通い始めました。

皆さんはコンソメの作り方をご存じでしょうか。
牛、鶏、骨、香味野菜からブイヨンを取り、さらにもう一度肉と野菜で旨味を高めつつ卵白を使って琥珀色に澄ませます。さらに香味野菜を浮きみに。ひどく原価の高い料理で、そのくせ手が掛かっているようには見えない「報われない」料理です。

あまりの美しさ、濃厚なおいしさ、そして高い技術。おそろしく手間も時間もかかっていることを目の当たりにしたのは衝撃的な体験でした。カトラリーやワインやチーズ、そして室内の装飾にいたるまで、すべてがめくるめく時間でした。

フランス人はどうしてここまでおいしいもの、美しいものに情熱を傾けられるのだろう?その答えを本や人の話からではなく、どうしても自分の感覚で知りたくなりました。六本木にあった「ルコント」で買ったクロワッサンが、ほかのお店のクロワッサンと明らかに違っていたのも一因。その理由をどうしても知りたいと思ったのです。

フランスへ

4年間勤めた会社を辞めてフランスに渡り、料理製菓学校に入学しました。
コンソメといえばポテトチップスでしか知らなかった当時の私にとって、本当のコンソメは大きな大きな衝撃でした。あとは取り憑かれたようにのめり込み、渋る両親を説得するためパリ滞在引き延ばし大作戦を決行、学校に残ってアシスタントになりました。

お休みごとに、フランス各地に足を伸ばしました。
当時、日本とは比較にならないくらいTGVも地方鉄道も安かったのです。地方には、パリにない自然の素晴らしさ、美しさ、食材の豊かさが広大に広がることを知り、なかでも地方ごとに存在する料理やお菓子に魅了されました。

その間にうけた雑誌の取材がきっかけとなり、「将来は、ものすごく奥深いフランス食文化を日本に紹介する仕事がしたい!」と思うようになりました。

出版のこと

帰国後、試行錯誤を経て、幸運なことにフランス滞在中の体験をエッセイ「パリ食いしんぼう留学記(晶文社)」として出版することができました。

何年か後には、文庫化(ソニーマガジンズ)もされました。

続いてそのご縁がきっかけで芦屋のフランス人パン屋さんの半生をまとめた「ビゴさんのフランスパン物語(晶文社)」を出版。

いまはもう天国に行かれたビゴさんには、じつにたくさんのものをいただきました。パンにたいする知識や経験、おいしいものへの審美眼(一緒にいさせて貰った時間の中で、自分の舌、価値観にもっと自信を持てるようになりました)、そしてたくさんの人脈です。

今にいたるまでずっとパンに携わる仕事もさせてもらっているのは、このときの繋がりがスタート。たくさんの方々をご紹介いただき、またその人が次につなげてくれて、今があります。感謝です。

あるとき、別の本のことでであった編集者から、「フランス料理が専門で、英米語学科を出ているなら出来ますか?」と願ってもない仕事をいただいたのが、
フォワ・グラのレシピ本「Rougié et le Japon: une histoire d’Amitiés(発行:ルージエ・ジャポン)」の英語訳です。

とても大変な仕事でしたが、英語と日本語とフランス語の間を行き来して、それぞれの国の料理の捉え方も、言葉の意味することも少しずつ違うと気づかされ、本当に面白い仕事でした。こんな機会をいただけたことに、やはり大きな感謝の思いでいっぱいです。(ついでながら、英語の大学を出して貰った両親にも感謝です!)

念願のレシピ本では、カメラマンさんがとてものってくれて、パリに撮影に行きました。何十年かぶりにパリで料理ができて、本当に幸福でした。
見知らぬ素材と驚きの連続の料理法、そして新しい味覚にワクワクしていた、留学当時の自分を鮮明に思い出します。

「私はこのワクワク感と楽しさを伝えたくて、教室をはじめ、今も続けている!」と、改めて心に刻むことができました。
それを本という手段で、まだ見ぬ誰かにも伝えられるなら、なんて幸せなことでしょう。

教室のこと

私は食べることも、作ることも大好き! 多くの方々と「食」の喜びを分かち合い、心豊かな時間を過ごせたらと願って、教室「アトリエ・イグレック」を自宅に開いたのは2000年のこと。その後2003年に大阪市内に移転させ、広い教室にいっそうたくさんの方にお越しいただけるようになりました。

フランス料理やお菓子のおいしさ、高い技術、芸術性、そして食べることを楽しむ姿勢。また、パリ以外の地に伝わる伝統的な地方料理やお菓子たち…。

教室では、私が現地で学んできたことを、できるだけたくさんお伝えしていきたいと思っています。もちろん、私自身も学ぶ身ですから、この先も食のエキスパートの方々からさらに吸収し、教室へ反映させていくつもりです。

私がこれまで何より運がよかったと思えるのは困ったとき、つらいとき、必要なとき必ず誰かが手を差しのべてくれたことです。誰一人知り合いのいないパリに何とか暮らせたこと、出版業界に何のつてもない私が本を出せたことは、ひとえに人との出会いがもたらしたものです。いろいろな人に会い、知恵を貸して貰い、手助けを受けました。

だからそれからは少しでも私が誰かの助けになり、喜びをもたらす存在になれたらと考えてきました。

教室を開いてから早20年超、たくさんの生徒さんに支えられて、ここまで続けて来ることができました。料理やお菓子をお教えしているけれど、逆に教わることがいつもいっぱいです。過去の私よりも、今の私のほうがいろいろなことが出来るようになりましたが、それは生徒さんがいつも側にいて、たくさんの示唆を下さるから。本当に感謝の思いでいっぱいです。

私が持てる技術や知識は、できる限りみなさんにお伝えしたいと思っています。そのことでみなさんが人生をもっと楽しめたり、その方の大いなる自信になったり。一緒に成長していきたいのです。教室を、豊かな時間を一緒に過ごせ、ともに喜びあえる空間にしたいと願っています。

ベーキングパウダーのこと

20年前にお菓子教室を始めたとき、「できることならベーキングパウダー(以下BP)を使わずにいこう」と決めました。
それはパリで料理学校に通っていたときに、製菓講座のおじいちゃん先生がBPなしですいすいとお菓子を作られる姿を見たことがきっかけです。

レシピには書かれていたとしても、どうしても必要なとき(たとえばマドレーヌのぷっくりしたおへそ)以外は使われないのです。それまでお菓子作りには絶対に必要なものと思い込んでいましたが、「なくてもできるのだ!」と知ったことは大きな驚きでした。

教室を始めた当初は「私もなくてもできるものだけ、使わないでおこう」くらいの軽い思いでしたが、結局一度も使うことなくここまで来てしまいました。大半のお菓子は少しの工夫で問題なく作れます。前述のマドレーヌも違う方法で、ひそやかですが、おへそを出すことができます。

身体に害はないとされますが、化学薬品ですから、使わないですむならそれにこしたことはないと思っています。というのも、私は子供の頃から体が弱くて、喘息持ちでした。冬場のマラソン大会は呼吸が苦しくてビリから2番。夏の水泳では、唇が真っ青! 病院通いは数知れず、両親は心配して、寒風摩擦、バレエ、毎日のマラソン、ローヤルゼリー(←今の時代は、喘息にはダメと言われます)などなど、いろんなことを試しました。

おかげで喘息は治ったものの、今もアレルギー体質であることにかわりはありません(猫が大好きなのに、撫でられません・・・。かなり重たいダニ防止布団で寝ています。密閉空間が嫌いなのは、化学物質の充満がちょっと怖いから・・・)。そんなこともあって、わざわざ自分のお菓子に化学薬品を入れたくないと思うのかもしれません。同じ理由で、家族や友達や、生徒など、大切な人たちにあまり食べさせたくないのです。

しかしBPの存在を糾弾したいのではありません。

BPを使わず作り続けてきた20年超の間に身にしみて分かったことは、世の中(とくにお菓子屋さん)には必要だということです。季節、天候、素材の変更、作り手の変化によるちょっとしたブレを何事もなかったかのようにカバーしてくれるのです。

逆に言えば「BPってなんてすごい発明なのだろう!」と思うくらい。回り道とも思える試行錯誤を繰り返し、たくさんの失敗を経て、でもそれでも素材の力ちょっとした技術があれば、どうにかなるものだという結論にたどり着きました。

そして色粉も同じ。なくても、自然素材からたくさんの色や味をだすことができるのです。

フランボワーズの赤、ビーツやルバーブの赤、ドラゴンフルーツのピンク、ピスタチオや抹茶の緑。自然はなんて凄いのだろう!と思います。

ただし自然食材だけに限定したお菓子作りに特化したいわけではありません。あくまでも基本は、おいしくて美しいフランス菓子にフランス料理のデザート。オーガニックシュガーも使っていますが、グラニュー糖がないと作れないものもたくさん。

また教室ではこれらのものを使いませんが、みなさんがお家で使われることまで制限する思いもありません。ほんの少し助けてもらうのもアリでしょう。

ただし、使わなくてもお菓子が作れるのは、みなさんにとって、ちょっとしたお菓子作りの自信につながるはずなのです。なぜなら素材をきちんと理解し、技術力があることが前提だから。メレンゲがきちんと作れないのにやみくもにBPを抜いてしまったら、きっとお菓子の膨らみも食感も味もよくなくなるでしょう。

結果的にBPや色粉を使うことなくここまで来てしまいましたが、それでもこれからも「薬品は使わないですむなら、使わないでおこう」がモットーです。

みなさんが、お家で周りの人に自信を持ってお菓子や料理を作ってあげられますように。
そして充足感と幸せな思いに包まれますように。