発祥のタルト・タタンを訪ねて
タルト・タタンは、Tarte des demoiselle Tatin
といって、「タタン姉妹のタルト」ともいいます。
タルト・タタン発祥の地は、ソローニュ地方にあるラモット・ブーヴロンLamotte Beuvronという町です。パリの南、オルレアン(「オルレアンの乙女」といえば、ジャンヌ・ダルクですね!)という大きな町から乗り継いで行きましたが、パリから特急で1時間半、運が良ければダイレクトに行けます。
さてこの国鉄のラモット・ブーヴロン駅の目の前にオテル・タタンがあります。
この左の建物の1階にサロンがあって、タタンは本来的にはランチやディナーのデザートとして出されるそうです。私は何も知らないで変な時間に行ったものですから、あわや食べられないところでしたが、レセプションの方が料理人に頼んでくださって、ディナーの仕込み前に出していただけることになりました。
発祥のオテル・タタンのタルト・タタン
さて、味は?
どっしり重たく、とても甘くて、おいしかったです!
きちんと温められてでてきました。一緒に注文したのは、現地の遅摘みの甘い白ワインです。ほかにアイスやクリームは添えられていません。
酸はあまり感じられず、そのとき「レモンは使ってないね」という話しを同行してくださった方とした記憶がありますが、りんご自体にも酸は感じられませんでした。
どんな風においしい?と訪ねられたら、それは
「普通においしい!」
でも発祥のタタンを食べられたということがあまりにうれしくて(もちろんおいしくなかったら残念ですが・・)、普通においしい、だけで私にはもう充分でした。同時に、タタンは大らかなデザートであって、神経質なことを言わなくていいのだな〜とも思いました。
そのとき貰ってきたパンフレットにあるように、タイル張りの薪オーヴン(右側のイラスト)がサロンにあったことをよく覚えています。
わぁ、これで焼いていたのかな!!
と思ったのですが、そもそもオーヴンは厨房にあるものでしょうし、当時のイメージの再現なのかもしれません。これは最後にご紹介している「無形文化遺産」の面白い(?)動画に登場しますので、お時間があったらぜひご覧ください!
さてここに書かれていることをかいつまんでお話ししましょう。
本家のいうお話として聞いてください。
タタンが生まれるまで
タルト・タタンはフランス・ソローニュ地方のラモット・ブーヴロンで生まれました。
町はその頃ブルジョワの集う狩りの場所として有名だったそうです。
駅前のホテル「オテル・タタン」を経営するCarolineとStéphanie Tatin姉妹が20世紀初頭に考案。
ある日ステファニーがお客さんとおしゃべりしすぎて、デザートを作り忘れていることに気がつきます。そこでひとまずりんごを、バターと砂糖の入った型に入れて、オーヴンへ!
はっ! これはタルトでもないし、煮りんごでもない! と気付きます。
そこで慌てて生地を乗せて焼いてみたけれど・・・さてどうしよう!
そこで皿を取って、ひっくり返して出した、というのがタタンの始まり。
美食家のブルジョワの集うホテルですから、これが評判となり、のちに有名な食の評論家キュルノンスキーが取り上げて、美食界に躍り出ました。
一方で、きっちりと計算して、高い技術力でタタンを作り上げたという説も紹介しています。
(また、私の手元の辞書には、この種の「ひっくり返すタルトtarte inversé」は同地方では古くから存在する、とも書かれています)
型と材料
・縁が高い型、種類はマンケ
・上質なバターとグラニュー糖
・ブリゼ生地
・りんごは好みや、季節、皮の剥きやすさや固さによる。golden, reinette, clochardを選ぶ人も。
・りんごはだいたい1/4分割で使う
作り方
・バターを型にたっぷり
・砂糖を一層
・りんごを一段、ぎっしり
・生地をかぶせ
・オーヴンで25〜40分
人によってはまず強火でキャラメルを作ってから生地を置いて、オーヴンへ
(マンケ型だとダイレクトに火に掛けられませんが、銅の型なら可能です。フランスには他にテフロンのお鍋のような見かけのタタン型があります)
決まり!?
熱々か、まだ温かい状態で供すること。
・砂糖とバター、ジュ(りんごの汁)のコンビネーションから生まれるキャラメルがタタンを特徴づける
・クリームやジャムの添加、サービス時のアルコールによるフランベは禁止
・前もって焼いたときは、温め直すこと
ヴァリエーションはアリだが、パティシエ、料理人、主婦のみなさん。つねに敬意を!りんご、バター、砂糖、生地、これだけ!!
タルト・タタンのコンフレリー
タルト・タタンの友愛団体
La confrérie des Lichonneux de Tarte Tatin
があるようです。
コンフレリーとは、友愛団体、協会という意味で、フランス各地にいろんなコンフレリーが存在します。
イベント時には昔の農民の格好をして、胸にはタルト・タタンの形のメダルを下げるようです。
昔の農民の格好とは、
ブルーのブラウス、赤いスカーフ、黒い帽子、サボだそう。
ちなみに「無形文化遺産」のタルト・タタンの項目の動画が面白かったので、ぜひ見てみてください。
現地ではどんな風に作るのか(さっきご紹介した作り方)が見られます。
タルト・タタンが生まれた町も、チャンスがあったら、ぜひぜひお訪ねください!
美味しいタルト・タタンを作って見たい方は、こちらもどうぞ!