グット・ドール La goutte d’or
コロナ禍でフランスに行けなくなってしまいましたので、前回の19年の夏に、一番おいしかったお店をご紹介しましょう。
グット・ドール La goutte d’or
183 Rue Marcadet, 75018 Paris
モンマルトルに出来た、お若いシェフのYann Menguyさんのお店です。
この界隈を昔の教会区で、グット・ドールgoutte d’orと呼ぶそうですが、訳せば「金色の滴」という意味だと思います。これがきっとそれを表したチョコでしょう。
並んでいる美しいお菓子の中から、 バニラのタルトを買ってみました。一口食べて、ちょっと言葉を失いました。
なんておいしい・・・。
繊細かつ繊細。としか言いようがありません。
シュクレ生地に軽いヴァニラムースが乗せられ、上にはホワイトチョコレートのごく薄い板がのっています。間にはクルミのプラリネ。
バニラだけでうなるようなおいしさを作り出すのは、なかなか難しいことだと思います。ヴァニラは本当に香りがよくて、うっとりするような心地になりますが、ともすれば単一の味で扁平になってしまいます。ところがあまりに繊細なヴァニラの風味に、ほんの少しのクルミの苦みを足すことで全体をごく軽く引き締め、絶妙なバランスに。構成要素の味の強弱、厚みや食感、口溶けなど、全部計算し尽くされている感じなのです。
思い出すのはその前年に食べたセドリック・グロレのバニラのタルトです。なんでもない材料ばかり。小麦粉、卵、バター、バニラ、生クリームなどなど、特殊なものはたぶん使っていないのに、「うーん、なんだこの完成度!」と思わされるおいしさ。
今回も、特殊なものはたぶん何一つないのに、この完成されたおいしさは、ほんとにやっぱり何なのでしょう!
食べ終わるよりも前に、これが今回のナンバー1に違いないという確信が!
(結局そうでした)
これはまた次回ぜひ行ってみないと、と思っています。